恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
慌てて言う雪也に、花澄も慌てて首を振った。
雪也は将来、東洋合繊の役員になるため幼い頃から英才教育を受けてきた。
なので普通の高校生に比べて、張っているアンテナの範囲が広い。
環も様々な本を読んでいるため広い方ではあるが、雪也の場合はそれが企業や経済に特化している感じだ。
雪也はコーヒーを軽く持ち直し、脇にあった黄色い車止めの柵の上に腰かけた。
……その、優雅な仕草。
雪也自身は気付いていないのかもしれないが、一つ一つの動作が雪也の場合は洗練されている。
その身なりからも仕草からも育ちの良さが一目でわかる。
思わずぼうっと見つめる花澄に、雪也はくすりと笑った。
片手を上げ、軽く手招きする。
「……おいで」
雪也は自分の隣の柵をぽんぽんと叩く。
花澄はなぜか自分の顔に血が上るのを感じた。
……なんだろう、いつもの雪也と少し違う気がする。