恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄は恐る恐る、雪也の方へと近づいた。
隣の柵に座り、ちらりと雪也を見る。
雪也は手にしていたビニール袋からカップに入ったスイーツを取り出した。
片方はチョコのパフェで、もう片方はマロンのプリンパフェだ。
「花澄ちゃん、どっちがいい?」
「え……っ」
「せっかくだし、後夜祭をしようよ。打ち上げは後日あるけど、後夜祭は今日しかできないからね?」
雪也はにこりと笑って言う。
花澄はしばし雪也を見つめた後、こくりと頷いた。
――――二人だけの、後夜祭。
今日で生徒会の仕事も最後だ。
こうして雪也と放課後に一緒に何かをすることも、もう、ない。
それに、雪也は高校を出れば美鈴と婚約する……。
せめて今日だけは、一緒にいたい……。
胸に広がる切ない痛み。
花澄はそれから意識を逸らすように、少し笑って雪也を見た。