恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄は慌てて首を振った。
雪也とは幼い頃から一緒に遊んでいたため、飲み物の回し飲みはよくやっていた。
けれど、こうして二人きりで一つのスプーンで何かを食べるのは初めてだ。
……ここで挙動不審になったら変に思われる。
と思いつつも、一度思ってしまうと止まらない。
バクバク動き出した胸の高なりを隠すように、花澄は無理やり笑顔を作って顔を上げた。
……その、瞬間。
「あ。……口元についてる」
突然視界が遮られ、花澄は息を飲んだ。
……鼻先に香る、甘いマロンの香り。
唇の脇に触れる、熱く湿った感触……。
頬の下についたクリームを舌先で舐め取られ、花澄はぴしりと固まった。
――――頭が、真っ白になる。
「……甘い、ね」
くすり、と雪也は花澄の耳元で小さく笑った。
……耳に触れる、雪也の吐息。
クリームのように甘い、その囁き……。