恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
6.家族じゃない
22:30。
雪也に屋敷の門の前まで送ってもらった花澄は、雪也に礼を言いその背を見送った後、ゆっくりと玄関の方へと歩き出した。
……まだ、夢の中にいるみたいだ……。
なんだか、足がふわふわする。
あのコンビニからここまで、どうやって帰って来たのか自分でも不思議だ。
でも……。
いい想い出が、できた。
雪也との最後の想い出。
きらきら輝く宝石のようなそれを、花澄は切ない痛みと共に胸の奥へとしまい込んだ。
……あの夏の別荘での想い出と、今日の想い出。
叶うことはなくても、雪也を好きになれたことは幸せだった。