恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】




叫びとともに、再び柱に押し付けられる。

はっと振り仰いだ花澄の唇に、環は再び口づけた。

……さっきのキスとは違う、心を揺さぶるような、情熱的な口づけ。

花澄の全てを奪い取ろうとする、強引な口づけ。


――――頭が、真っ白になる。


花澄は茫洋と環の唇を受けながら、指先に柱の窪みが触れるのを感じていた。

昔、二人で背比べをした時につけた、傷……。


やがて唇が外され、環の瞳がじっと花澄を見つめる。

榛色の瞳に滲む、灼けるような情熱と、哀しいまでの切なさ。

……心から何かを切望するような、切羽詰まった瞳。

その瞳に花澄は記憶の奥底が揺さぶられるのを感じた。

そう、あの時……。



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