恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
『環が私を抜くなんて、絶対に無理だよ~』
……小学五年の、最後の背比べの時。
あの時は環より花澄の方が背が高かった。
得意げに言う花澄に、環はその榛色の瞳に切なげな光を浮かべて、言った。
『じゃあ、もし、僕がカスミちゃんの背を抜いたら……』
――――ずっと忘れていた、その後の言葉。
花澄は喉を震わせながらその言葉を思い出した。
その後に続いた言葉は……
『――――僕がカスミちゃんの背を抜いたら、僕のお嫁さんになってくれる?』
花澄の目尻から涙が溢れだす。
胸の奥で眠っていた遥か遠い記憶が、切なく花澄の胸を締め付ける。
花澄は俯き、肩を震わせた。