恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「一週間、待つ。一週間後までに返事を聞かせてほしい」
「……っ……」
固まった花澄の手を、環は無言でそっと取った。
そのまま頬を寄せ、手の甲に静かに口づける。
……柔らかい、その感触。
息を飲んだ花澄に、環は目を細めて笑った。
人を誘い込むような、清冽で艶やかな榛色の瞳。
魂を持って行かれる、その瞳……。
「……おやすみ、花澄」
環は花澄の手を放し、踵を返した。
そのまま離れに続く渡り廊下の方へと歩いていく。
花澄はその背を見つめながら、ふらりと柱に寄りかかった。
そのまま脱力し、柱に凭れ掛かったままずるずると床に座り込む。
……胸がいっぱいで、何も考えられない。
視界の先で曼珠沙華の赤い花が夜風にゆらゆらと揺れている。
花澄は魂が抜けた顔で、その光景をぼんやりと見つめていた……。