恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
環が作ったご飯を食べ、環が入れてくれたお風呂に入り、環が手入れしている屋敷に住むという生活を、もう十年以上続けているのだ。
こう言っては何だが、普通に付き合うより密度の濃いことを既にしている気がする。
極端に言えば、既に同棲しているようなものだ。
「どっ……同棲って……っ」
花澄はカッと頬を染め、慌てて首を振った。
……何を考えているのか、自分は。
けれどそれらのことが普通のことになってしまっている今、付き合うと言ってもどう付き合うのだろうか。
周りの友人達の『お付き合い』などを傍から見ていると、普通の男女の付き合いはこういうものなんだろうな、となんとなく納得できる。
告白して、付き合うようになって、一緒に登下校するようになって、放課後に繁華街で遊んで……。
そして付き合いが深まったら、体を重ねるようになって……。
しかし自分と環のことに限っては、まるで想像できない。
ましてや体の関係など、想像するだけで頭が沸騰しそうになる。
「……って何考えてるんだろ、私……」