恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



「……どしたの、花澄ちゃん?」

「あ、ごめん。……15:30過ぎだね。いつもごめんね、雪くん」

「いいんだ、花澄ちゃんはそんなこと気にしないで。じゃ、また放課後にね?」


雪也はにこりと笑い、軽く手を振って図書室を出て行く。

その背を見つめていた花澄だったが……。

雪也と入れ替わりに環が入って来たのに気付き、思わず息を飲んだ。


「……っ!」


環は雪也の顔をちらりと見た後、奥にいた花澄に視線を投げた。

――――訝しむようなその視線。

花澄はなぜか居たたまれなくなり、視線を逸らした。

そのまま椅子から立ち上がり、逃げるように逆側のドアの方へと歩み寄る。


……なんとなく、顔を合わせづらい……。


こんな調子で明日までに結論なんて出るのだろうか。

花澄は環の視線を背に感じながら、ドアを開けて図書室を出た。



< 316 / 476 >

この作品をシェア

pagetop