恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「……どしたの、花澄ちゃん?」
「あ、ごめん。……15:30過ぎだね。いつもごめんね、雪くん」
「いいんだ、花澄ちゃんはそんなこと気にしないで。じゃ、また放課後にね?」
雪也はにこりと笑い、軽く手を振って図書室を出て行く。
その背を見つめていた花澄だったが……。
雪也と入れ替わりに環が入って来たのに気付き、思わず息を飲んだ。
「……っ!」
環は雪也の顔をちらりと見た後、奥にいた花澄に視線を投げた。
――――訝しむようなその視線。
花澄はなぜか居たたまれなくなり、視線を逸らした。
そのまま椅子から立ち上がり、逃げるように逆側のドアの方へと歩み寄る。
……なんとなく、顔を合わせづらい……。
こんな調子で明日までに結論なんて出るのだろうか。
花澄は環の視線を背に感じながら、ドアを開けて図書室を出た。