恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
――――夕刻。
体育祭が終わり、ジャージから制服に着替えた後。
花澄は担任に頼まれ、校舎とグラウンドの間にある用具室に向かった。
今日の体育祭で使った備品の数が足りているか、確認するためだ。
本当なら担任の仕事なのだが、体育祭の後で何かと忙しいらしく、日直だった花澄に頼んできたのだ。
「えっと、ソフトボールの数は、と……」
用具室の中は暗く、ボール類や跳び箱、高跳び用のマットなどが雑然と置かれている。
窓は数か所あるが、北を向いているため日中でも薄暗い。
花澄は籠に入ったボールの数を数えていたが、ふと窓の向こうに誰かの気配を感じた気がして、顔を上げた。
「……?」
花澄はチェック用の紙とペンを跳び箱の上に置き、窓へと寄った。
窓の外を見てみるが、誰もいない。
見ると、校舎の近くに植えられた木の下に、ソフトボール用のバットが数本置かれている。
どうやら誰かが返却しようと思って来たものの、用具室が開いていなかったので近くに置いていったらしい。
あれも、用具室に戻しておかなければ……。
と思い窓から離れた、その時。