恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
キィと扉が開く音が背後でし、花澄は振り返った。
その次の瞬間。
「……っ!」
用具室に入ってきた男に腕を掴まれ、花澄ははっと顔を上げた。
……この手の感触は……。
生臭い息が花澄の顔に降りかかる。
ぞっとし、花澄はとっさに男の手を振り払い、逃げようとした。
しかし男はニヤリと笑い、その手を掴んで花澄をさらに引き寄せた。
――――あの時の、男だ。
花澄は恐怖でパニックになりながら、無我夢中で男の腕を振りほどこうとした。
けれど男の手は強く、まるで歯が立たない。
花澄はもがきながら男の顔を見た。
男はがっしりとした体形で背が高く、頭はスポーツ刈りだ。
しかしその顔に見覚えはない。
少なくとも、花澄のクラスメイトではない。
「はっ、放して!」