恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



花澄は言い、雪也を見上げた。

雪也と美鈴は、花澄と環の関係を知っている数少ない人間だ。

雪也はふーんと呟くように言うと、腕を組んではぁとため息をついた。


「……結局、達樹、来なかったな」

「……だね」

「アイツ、俺に全部やらせる気じゃないだろうな。冗談じゃないぞ」


困ったように言う雪也に、花澄は少し笑った。

達樹こと島本達樹は現生徒会長で、ノリはいいのだが仕事は多少いい加減なところがある。

……そして。

雪也は人がいいので、本来なら達樹がするべき仕事をつい手伝ってしまう。

それも雪也の優しさゆえだと花澄は思っているのだが、雪也本人はたまにそんな自分に嫌気がさすらしく、たまにこうして愚痴めいたことを花澄に言うことがある。

『いい人』な分、その裏に抱えるストレスもけっこうあるのだろう。

けれどそれでも周りの人を助け、ムードメーカーを買って出る雪也はやはりいい人なのだと花澄は思う。

……しかし。

雪也の能力からしたら生徒会長も余裕で務まると思うのだが、なぜ雪也は生徒会長にならなかったのだろうか。


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