恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
4.タイム・リミット
二人が去った後。
「…………」
花澄はマットの上に仰向けになったまま、肩を震わせた。
ブラウスの前を閉めなければと思うが、手が震えて、指がまともに動かない。
――――怖かった。
今になって涙が溢れてくる。
霞んだ目で用具室の中を見ると、窓ガラスの破片が散らばっている。
花澄は思わず息を飲んだ。
……環は、奨学金の選考があるのに……
こんなことをしたのがバレたら、選考に落とされてしまう。
でも……
環がそこまでして自分を助けてくれようとしたことが、嬉しい。
胸に、熱い何かが湧き上がる。
それは涙となって花澄の頬を流れ落ちていく。
環はバットを床に放り、花澄の傍へと歩み寄った。