恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「……ねえ、雪くん。どうして生徒会長にならなかったの?」
と聞いた花澄に。
雪也はしばし考えた後、口を開いた。
「んー……。単純に面倒くさかったから。俺、いろいろ忙しいしね? それに会長は達樹みたいな性格の奴の方がうってつけだよ」
「そうかなー……」
「そうだよ。ああいうのは俺には向いてない。あんまりやりたいと思えないんだ。……幻滅した?」
雪也は目を細め、悪戯っぽい瞳で言う。
心を覗き込もうとするような、その瞳。
……その瞳の奥にある、月のように清冽で真っ直ぐな心。
ずっと花澄を包んでくれた、その心……。
花澄は慌てて首を振った。
「幻滅なんてしないよ。……雪くんはちゃんと会長を手伝ってるし、みんなのためにいろいろ動いてくれてるじゃない」
と、花澄が言うと。
雪也はまいったというように肩をすくめた。