恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
5.雪也の不安
11月中旬。
――――金曜の放課後。
花澄は進路調査票を持ち、進路指導室へと向かっていた。
そろそろどの大学を受けるか確定させる時期だ。
花澄は近くにある私立の女子大を2校ほど受けるつもりだ。
進路指導室にいた教師に調査票を渡した後。
廊下に出た花澄を、低いテノールの声が呼び止めた。
「花澄ちゃん」
見ると、雪也が廊下の奥から歩み寄ってくる。
花澄が足を止めると、雪也は少し笑って花澄を見下ろした。
「調査票を出しに来たの?」
「うん。雪くんはもう出した?」
「昨日出したよ。いよいよ受験シーズン到来って感じだな。気が重いよ」
と言いつつも、雪也はいつもの朗らかな笑みを浮かべている。
花澄は雪也に聞いてみた。