恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「……あー。ホントに昔から変わらないな、花澄ちゃんは」
「……?」
「変わらないってのも良いんだか悪いんだか。……まあ、俺にとってはその方がありがたいけどね?」
雪也は楽しそうにくすくすと笑う。
……思わず吸い込まれてしまいそうな、鮮やかな笑顔。
ひとしきり笑った後、雪也は話を変えた。
「そういえば花澄ちゃん。俺、来週末、君の家に行くけど……聞いてる?」
「うん。おばあさまが言ってた」
雪也の言葉に、花澄は軽く頷いた。
雪也は高校に併設された寮に入っており、平日は寮で生活している。
しかし土日は寮母さんが不在のため、食事が出ず、清美の計らいで雪也はたまに花澄達の家で土日を過ごす。
同じように美鈴の家にも行っているらしいのだが、そのあたりのことは花澄は良く知らない。
「花澄ちゃんは来週の土日、何か用事ある?」
「土曜の午前に箱根の工房に行くことになってるけど、それ以外は特にないよ」
「じゃあ、時間があったら環も連れて海にでも行かない? 今、イサキのシーズンなんだよね」