恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
環は宙を見据えながら口を開く。
「……この世の中、何が正しいかなんて時と場合によって変わってくる。万人受けする正解なんかない」
「……?」
「だからどんな環境にいたとしても、自分で判断して、自分の信条と献身を武器にして戦うしかない。例え孤独な戦いでも、大事なものを守るためにはそうするしかない」
「…………」
「小学校の頃、それができるお前が、おれは羨ましかった。お前のように強くなりたいと思った」
環の言葉に、花澄は驚き目を見開いた。
環がそういう思いで自分を見ていたとは知らなかった。
――――孤独の中、自分の信条と献身を武器にして戦う。
花澄からすると、むしろ環の方がそうしているし、自分よりよほど強いと思うのだが……。
うーんと首を傾げる花澄に、環はくすりと笑った。
「ま、今は内面だけじゃなく、顔つきもあれに似てきている気がするけどな?」
「……っ、なによ、それっ!」
「ほら、行くぞ。他に買いたいものはないか?」
「……あっ、アイス!」
「欲しいなら早く入れろ。行くぞ」
環は花澄の手からカートを奪い、レジの方へと転がしていく。
花澄は慌ててアイスコーナーへと走っていった。