恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
雪也の誘いに、花澄はふむと首を傾げた。
雪也は甘い外見にそぐわずアウトドアが得意で、夏は海や川、冬は雪山と、季節ごとに花澄や環を誘ってくれる。
美鈴と遊ぶときはショッピングや映画など、どちらかというと街で過ごすことが多いらしいのだが、花澄や環と遊ぶときはほとんどがアウトドアだ。
街に行ったとしても、ボーリングやゲーセンがせいぜいだ。
子供っぽい自分に合わせてくれているのかもしれないが、たまには美鈴のように、街でデートらしきこともしたいなと思わなくもない。
……などと思っていることは、雪也には絶対に知られるわけにはいかない。
花澄は考えを振り払うように慌てて顔を上げた。
「海かー。私はいいけど、環はどうかなー……」
「今の時期は磯で貝やワカメが採れる。食材探しだと言えば、アイツも来るんじゃないかな?」
「なるほど……」
そうかもしれない、と思いながら花澄は環の顔を脳裏に思い浮かべた。
確かに『遊び』だとは言わずに『仕事』と言った方が環は来そうな気がする。