恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



突然否応なく突きつけられた現実に、花澄はずるずると床に座り込んだ。

……自分の、立場。

これまでにない、引き裂かれるような痛みが胸にこみ上げる。

花澄は俯き、唇を噛みしめた。


環との将来を選んだら、工房は、この家は……どうなってしまうのか。


ずっと苦労してきた父。

工房を立ち上げ、本家に頭を下げ、母と離婚し……

父が何十年もかけて大事にしてきたものを、自分は見捨てられるのか?


……そんなことは、できない……。


花澄の目が涙で滲んでいく。

胸にこみ上げる、切ない痛み。

その痛みに、涙の熱さに、……花澄は自覚した。



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