恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「環に聞いておくよ。それでいい?」
と言った花澄に。
雪也は少し笑って、手を伸ばした。
ポンポンと花澄の頭を軽く叩き、少し背を屈めてその整った顔を近づける。
突然のことにドキッとした花澄に、雪也は笑顔で言った。
「ああ。……来週、楽しみにしてるから」
「……っ……」
「もうすぐ陽が沈む。気を付けて帰んなよ、花澄ちゃん?」
雪也はくしゃっと花澄の髪を撫で、手を離した。
……まるで子供にするような、その仕草。
たぶん雪也は、自分を同年だとは思っていないに違いない。
外見的にも精神的にも大人びた美鈴が傍に居るため、そう思われてしまうのも仕方がないことではあるが……。
きっと雪也にとって、自分は妹のようなものだろう。
もっと大人っぽくなりたいと思う反面、このまま妹のように雪也の傍にいたいとも思う。
そう思うこの思いは、憧れなのか、恋なのか……。
雪也の背を見送りながら、花澄は微かなため息をついた。