恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
4.レア中のレア
翌週の土曜。
朝。
花澄は屋敷の裏手にある作業小屋の前で、環と共に染料に使う植物をまとめていた。
今日はこれから、父が経営している箱根の工房に環と共に向かう予定だ。
父の工房では主に藍染めを行っているが、今は『草木染め』が流行っているため広報も兼ねて草木染めも一部行っている。
今の時期に草木染めに使える植物は、ヨモギやハルジオン、ノイバラ、山桜などだ。
基本的に全ての植物が染料として使用できるのだが、植物によって草木染めに適している時期が違う。
「……ヨモギは、とりあえずこのくらいあればいいかな?」
花澄はヨモギの束をまとめながらちらりと隣の環を見た。
環は山桜の枝を剪定鋏で同じ長さに切り揃えている。
ヨモギも山桜も、裏の雑木林に自生していたものだ。
『どんな色が出るか試してみたいから、持ってきてくれ』……と父に言われたのは三日前のこと。