恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
何故、花澄が婚約を辞退したのか……。
美鈴や本家から何か取引を持ちかけられたのかもしれない。
しかし……。
例え本家から何か言われたのだとしても、少しでも自分を好きなら、花澄は自分のところに相談しに来ただろう。
そして相談しに来てくれたのなら――――いくらでも、やり様はあった。
しかし花澄は自分のところに来ることはなく、一人で辞退することを決めてしまった。
つまり、婚約を辞退したのは資金繰りだけが理由ではないと言うことだ。
資金繰り以外の理由、それは……。
「……っ、花澄……」
その理由に、心の奥底では気付いていた。
この数か月、花澄と接するたび、彼女の心の動きが手に取るようにわかった。
けれど、その事実を直視することを無意識のうちに避けていた。
雪也はぎりっと唇を噛みしめた。
――――花澄は、環を選んだのだ。