恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
環が普段着ているTシャツのほとんどは、企業の商品だったり地方キャラだったりと、ほとんどがネットの懸賞に応募して当てたものだ。
環にも小遣い的なものはあるのだが、環はそのほとんどを本の購入に充てている。
環の頭がいいのはそのせいもあるのだろうが、高校生らしくないと言うか何というか。
離れの環の部屋には懸賞で当てた電化製品やら雑貨やら、果てはIPodに至るまで、あらゆるものが雑然と置かれている。
高値で売れるものはネットオークションに出しているらしいのだが、詳しいことは花澄にはよくわからない。
ちなみに環が今日着ているのは九州某県の『くまモン』のTシャツだ。
あの朴訥なクマの顔が、環が着るとどことなく色気が漂っているようにすら見えてしまうのだから、美形の底力というのは計り知れない。
――――というかもう、魔力に近い。
ついまじまじと見てしまった花澄に、環は冷静な声で言う。
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
「……へっ?」
「私を射殺しそうな目で凝視されてらっしゃるので。畏れながら、お嬢様の精神状態がいささか心配に……」
「アンタ、敬語なら何言ってもいいとか思ってない?」