恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
4.恋の終わり
夕刻。
家に駆け戻った花澄は、父の部屋へと飛び込んだ。
父の部屋は花澄の部屋と同じ二階にある。
父は駆け込んできた娘の形相に驚いた様子で、読んでいた新聞から顔を上げた。
「お父さん!」
「……ああ、花澄か」
繁次はどこか霧が晴れたような、さっぱりした顔をしている。
不安から解放されたような、その顔。
しかしその表情を見た花澄の顔は、みるみるうちに強張っていった。
花澄は手を拳に握りしめ、震える声で言った。
「お父さん。……学校で美鈴から聞いたんだけど、その……」
「ああ、実はな。今日の昼過ぎに雪也君から連絡があってな。資金援助をしたいと申し出てくれた」
「……雪くん、が?」
「ああ。……で、その代わりに、お前との正式婚約を認めて欲しいと言われてな。大学を出たら、お前と結婚したいと……」