恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
父の言葉に、花澄は息を飲んだ。
――――大学を出たら、結婚。
くらっとした花澄に、繁次は続ける。
「場合によっては在学中になるかもしれないが。まあそれは、状況によるだろうな」
「……っ、そんな……」
「もともと幼馴染のように親しく育ったお前達だし、親同士ももう10年来の付き合いだ。お前も異論はないと……」
繁次は言いかけたが、花澄の顔から血の気が引いていることに気付き、言葉を止めた。
眉を顰め、花澄の顔を覗き込む。
「どうした? 花澄?」
「…………」
「月杜家との縁ができれば、うちも大分やりやすくなる。資金繰りもそうだが、販路の拡大や価格交渉の場でも、月杜家の後ろ盾があれば有利に進められるようになる」
「……っ」
「美鈴に譲れと姉貴に言われて、わしも一度は退いたが、雪也君自身がお前を望んでいるなら話は別だ。これ以上の話はないだろう?」
繁次は上機嫌で言う。
花澄は父の表情を見ながら、心の中で何かが死んでいくのを感じた。