恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
自室に戻った花澄は、ベッドに座り携帯を手に取った。
ショックで頭が朦朧とし、何から考えればいいのかわからない。
けれど、どうしても確かめなければならないことがある……。
花澄は震える手で、鞄から携帯を取り出した。
――――なぜ雪也は、突然自分と婚約しようなどと思ったのだろうか。
雪也は優しい。
単純に工房の資金繰りが困っていることを知り、それで資金援助の名目にと婚約話を持ち出してきただけではないのか……。
大学を出たら結婚するなど、雪也は本気で言っているのだろうか。
美鈴と自分を、間違えているのではないだろうか……。
雪也のナンバーを表示し、電話を掛ける。
やがて数回のコール音の後、雪也が出た。
「……もしもし、雪くん?」
『……花澄ちゃん……』