恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
5.虎鶫の啼く夜
その日の夜。
23:00。
花澄は自室のベッドの上で、膝を抱えて俯いていた。
繁次はあれから工房に戻り、清美は明日大阪で行われる冬の俳句の会に参加するらしく、律子を連れて夕方に屋敷を出た。
いつも清美は、関東の外に出かけるときは、着付けなどを手伝ってもらうため律子を連れて行く。
なので今夜は、屋敷には自分と環しかいないのだが……。
「…………」
花澄は俯いたまま、膝に額を押し付けた。
誰もいない今日なら、環と話をするにはちょうどいいのだが……。
でも……。
花澄は今日、環と一度も顔を合わせていない。
環も花澄と雪也の件については聞いているはずだ。
……たぶん、自分と顔を合わせたくないのだろう。
花澄は引き裂かれそうな胸の痛みとともに、自分の視界が滲んでいくのを感じた。
環に、言わなければならない。
もうこの関係は続けられない、と……。