恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】




「……環ももう、聞いたと思うけど。私、雪くんと婚約することになったの」

「……」

「だからもう、これ以上……」

「……嫌だ」


胸の奥から振り絞るような、声。

はっと顔を上げた花澄の肩を、環は両手で掴んだ。

――――愛しい熱。

昔から体に馴染んだ甘く濃密な花の香り。

触れられただけで、心はいとも簡単に引きずられてしまう。

花澄は環の手から逃れようと、後ずさろうとした。

しかしその肩を、環がぐっと掴む。

そのまま引き寄せられ、固く抱きしめられる。


「嫌だ。……おれは絶対に、お前と別れない!」

「環……っ」

「絶対に、離さない。お前だけは……っ」


< 411 / 476 >

この作品をシェア

pagetop