恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「……環ももう、聞いたと思うけど。私、雪くんと婚約することになったの」
「……」
「だからもう、これ以上……」
「……嫌だ」
胸の奥から振り絞るような、声。
はっと顔を上げた花澄の肩を、環は両手で掴んだ。
――――愛しい熱。
昔から体に馴染んだ甘く濃密な花の香り。
触れられただけで、心はいとも簡単に引きずられてしまう。
花澄は環の手から逃れようと、後ずさろうとした。
しかしその肩を、環がぐっと掴む。
そのまま引き寄せられ、固く抱きしめられる。
「嫌だ。……おれは絶対に、お前と別れない!」
「環……っ」
「絶対に、離さない。お前だけは……っ」