恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



シーツの波間に、長い黒髪が揺れる。

寒さに肩を震わせた花澄の体を、逞しい腕が抱き寄せる。

花澄は環の胸に頬を寄せ、目を伏せた。

二人の熱で暖まった布団は、まるで春のような暖かさだ。


少なくとも今、二人にとって、ここは春だ。

ずっとこの温かさの中で微睡んでいたい。

花澄は目を閉じ、環の背に腕を回した。

甘い花の香りが花澄の鼻先をかすめる。

肌越しに伝わる熱も、シーツのひやりとした感触も……全てが、愛おしい。



――――二人で成し遂げてしまった、罪。



朝陽とともに、花澄の心に罪悪感がひたひたと押し寄せる。

恐らく罪悪感は日増しに大きくなり、自分はその罪に怯え、苦しむだろう。

……けれど、後悔はない。

恐らく自分はこの夜を一生忘れないだろう。

せめて今だけでも、この温かさの中に漂っていたい……。

微睡む花澄の頬に、優しい口づけが落とされる。



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