恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
八章
1.甘い誘惑
1月。
始業式の日。
放課後、花澄は知奈とともに駅前のカフェにいた。
木枯らしが窓の外を吹き抜け、街路樹の枝を揺らす。
「そっかー。ついにオトナの階段を昇ったってワケね! どう? オトナになった感想は?」
「…………」
花澄ははぁと小さく息をつき、俯いた。
自分としては何かが変わったという実感はない。
体の感覚も以前のままだ。
ただ、あの時のことを思い出すとじわりと体が熱くなる。
……一度知ってしまったら、知る前には戻れない。
けれど精神的な部分では、何かが変わったという感じはしない。
これが普通のカップルなら……。
ただ、環のことだけを考えていればいいのなら……。
今頃、自分の頭の中には花が咲き乱れていただろう。
しかし……。