恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



1月下旬。

センター試験の結果が出たその日。

花澄は進路指導室に向かいながら、これからのことについて考えていた。

センターの結果はそこそこで、このままだと予定通り、花澄は近くの女子大を受けることになる。

そして環はセンターを受けはしたが、どうやら国内の大学を受けるつもりはないらしい。

……やはり、海外の大学を目指しているのか……。

花澄は物思いに耽りながら廊下の角を曲がった。

そのとき。


「花澄ちゃん」


横から声を掛けられ、花澄は足を止めた。

見ると、雪也がいつもの笑みを浮かべて歩み寄ってくる。

しかし花澄は雪也を見、顔を強張らせた。

……あの日以来、雪也の心が見えなくなってしまった。

そしてそれは今も変わらない。

固い表情を浮かべる花澄に、雪也は自嘲するような大人びた笑みを浮かべ、言う。


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