恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】




花澄ほど、自分の心を焼き焦がす存在は他にいない。

花澄との恋に全てを焼き尽くされるのなら、いっそ本望だ。

心の底からそう思う自分がいる。


恋に目が眩んでいると、自分でもわかっている。

けれどもう、止められない。

花澄が雪也と婚約していると知っても、もう、自分の意志では止められないのだ。

……眩暈がするほどの、愛おしさ。

環は情感に満ちた花澄の瞳を、じっと覗き込んだ。


どうしても、花澄を離したくない……。


花澄は辛そうな顔をしつつも、環が求めれば応えてくれる。

環は心のどこかで、自分がそれで花澄の心を確かめていることに気付いていた。

……花澄は好きでもない人間に体を開いたりはしない。

だから花澄が愛しているのは自分だ、雪也ではない、と――――。

それは確かめるというより、祈りに近いかもしれない。

環は花澄の頬に手を伸ばし、指先で滑るように撫でた。

花澄の瞳に滲む涙に、環の心は切なく突き動かされる。



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