恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
環の性格を考えれば、はっきりと留学が決まるまでは無責任なことは言えないと思ったのかもしれない。
何も聞かなかった自分にも責任はある。
けれど……。
花澄は目元を片手で覆い、重いため息をついた。
今から言ったところで、環が話し合いの場を設けてくれるとは思えない。
この航空券は環の覚悟そのものだ。
今から花澄が何を言ったところで、環が考えを変えることはないだろう。
白か、黒か――――
ここまで追い詰められても、『選べない』自分。
自分はどうして、選べないのだろう……。
航空券を見つめる目に涙が滲んでいく。
自分でも処理しきれない感情が、胸に怒涛のように押し寄せる。
……けれどもう、時間はない。
花澄は航空券を見つめたまま、ぐっと唇を噛みしめた。