恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄は机に歩み寄り、引出しから航空券を出した。
『デルタ航空 成田 - 香港』と記されたそのチケットを、穴が開くほど凝視する。
花澄はしばらく固まったように航空券を見つめた後、それを再び引出しにしまった。
寝不足のため手先がおぼつかず、引出しは閉め切らなかったが、花澄はそれに気づかぬまま机に背を向けた。
そろそろ朝食を取りに行かないと、家族に怪しまれてしまう。
それに、あと30分もすれば律子が掃除に来る……。
花澄は上着を羽織り、部屋を出た。
――――花澄が部屋から出た後。
窓からの風に吹かれ、引出しからひらりと航空券が落ちた。
そのことに、花澄は全く気付いていなかった……。