恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄は一輪だけ咲いた、その赤い花をじっと見つめた。
目に染み入るような、その鮮やかな赤色。
曼珠沙華は根の部分に毒がある。
『綺麗な花には毒がある』というが、まさにその通りだ。
……そう、まるで環のように。
その綺麗な姿と良い香りで人を惑わすが、少しでも触れるとそこから毒が入り込み、全身を蝕んでいく。
けれどその毒は、敵を攻撃するだけではなく、花自身を外敵から守る効果もある。
毒はある意味、強さでもあるのだ。
――――自分にはない、強さ。
環にあって、自分にはない……強さ。
花澄は少し背を屈め、一輪だけ咲いた季節外れの曼珠沙華をじっと見つめた。
曼珠沙華の記憶は、遠い昔の色褪せた記憶へと続いている。
……脳裏に蘇る、あの秋の記憶。
花澄は曼珠沙華を見つめながら、そっと目を伏せた。