恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「……環……」
花澄は涙の中、自分の中で何かが終わったのを感じた。
……懐かしい想い出の延長線上で、恋に身を灼いた日々。
幼い日々は終わりを告げ、自分はこれから大人の世界で生きて行かなければならない。
自分の心を覗き込むと、ぽっかりと開いた空洞が見える。
花澄はもうそれが埋まることはないことを、痛みと共に自覚した。
――――失った、半身……。
これからは、一人で生きて行かなければならない。
どんなに寂しくても、切なくても……。
どんなに情けなく、弱い自分であっても……。
誰にも流されず、一人で立たなければならない。
虎鶫の鳴き声が花澄の胸に切なく響く。
花澄はぼんやりと虚空を見つめながら、その哀しげな鳴き声を聞いていた……。