恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
凍りついた環の前で、その女性・律子ははぁはぁと肩を上下させた。
呼吸を整えた後、キッと環を睨み上げる。
律子はその瞳に怒りを漲らせ何か言おうとしたが、その言葉をぐっと飲み込んだ。
そのままポケットに入っていた何かを取り出し、環の目前にかざす。
環は目を見開き、それを凝視した。
「……環。これが、お嬢様の答えよ」
――――それは、破られた航空券だった。
環の顔から一気に血の気が引いていく。
律子は蒼白になった息子に、畳み掛けるように言った。
「お嬢様はここにはいらっしゃらない。香港には一人で行きなさい、環」
「……っ……」
「でもね、環。……どうしてお嬢様がお前を選ばなかったのか、わかる?」
律子は鋭い目で環を見つめる。
環は衝撃で固まったまま、微動だにせず律子を見つめていた。