恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
環の言葉に、花澄はさきほどの環の言葉を思い出した。
ひょっとして……。
環が野菜の下拵えすら自分にさせようとしないのは、この手を気遣ってなのだろうか。
環は素直ではないが、根は優しい。
このハンドクリームもおそらく、今日たまたま鞄に入っていたと言うわけではなく、いつも環の鞄に入っているのだろう。
――――目には見えない、環の優しさ。
目に見えないものはないものとつい思ってしまうが……そうではない。
このところ環の意地悪な面を見ることが多かったので、環の優しさに気が付かずにいた。
昔から変わらず、自分の近くにあったのに……。
気付かなかった自分が、なんだか恥ずかしい。
ずっと一緒に育った、幼馴染。
……強くて優しい心を持つ、自分の半身。
花澄は環の手から伝わる温かさが、じわりと自分の心を温めていくのを感じていた。