恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
美鈴の言葉に、花澄は軽く頷いた。
美鈴はぐるりと工房の中を見回し、その紅い唇を開く。
「それにしても……。相変わらず全て手作業なのね。もうちょっと効率よくしなければ、売上は伸びないわよ?」
「……」
美鈴の言葉に、花澄は押し黙った。
美鈴とその母・美織はこの工房の売上を上げるため、作業の一部を機械化してはどうかと数年前から提案している。
しかし父の繁次は全ての作業を手作業で行うことに拘っており、なかなかその提案を呑もうとしない。
花澄も個人的には父と同じく手作業派だが、このままでは売り上げが思うように上がらないのも事実だ。
「ま、それはまた今度にして。……もう作業は終わったんでしょ?」
「うん」
花澄は美鈴をまじまじと見た。
……どうして美鈴がここにいるのかはわからない。
雪也が海に一緒に行こうと誘ったのだろうか。
しかし、美鈴はこの格好で海に行くつもりなのだろうか。
と疑問に思ったのが顔に出たのか、雪也が肩をすくめた。