恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



父がドアの向こうから呼ぶ声が聞こえ、花澄は慌てて振り返った。

どうやら挨拶が済んで戻ってきたらしい。

後ろから男の子が何か言っているのが聞こえたが、部屋に入ってきた父には聞こえなかったらしく、花澄を抱き上げてそのまま部屋を出た。


『挨拶は澄んだから、今日は帰ろう。また会う機会はある』

『え……っ』

『行くよ、花澄』


――――結局。

その日はパーティに出ることができず、花澄は屋敷に戻ることになった。



しかし、その一か月後。


花澄は美鈴と共に向かったパーティで、その男の子に再会した。

御曹司らしい上品な服を着、華やかで優しげな笑顔を浮かべていたが、あの時の男の子だというのはすぐにわかった。

そして男の子の方も、すぐに花澄の顔を思い出したのだろう。

一瞬、驚いたような表情を浮かべたあと――

とても嬉しそうな、明るい笑顔を花澄に向けた。


心が吸い込まれるような、綺麗な笑顔。

そして。


『美鈴、花澄。この二人が、お前達の婚約者になるんだよ?』


祖母の言葉に、花澄は生まれて初めて、胸のときめきを覚えた――――。


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