恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
雪也は悔しそうに言う。
……どこか子供っぽいその口調。
いつも大人びている雪也にしては、珍しい。
花澄は思わず笑いながら、雪也を見上げた。
「そういえば雪くん、いつから普通に食べられるようになったの?」
と、花澄が聞くと。
雪也はその黒い目を細め、口を開いた。
「あの時、君、クッキー持って来てただろ?」
「……?」
花澄は首を傾げた。
確かにあの日、クッキーを持って行ったが……。
テーブルに置きっぱなしで帰ってしまったため、どうなったのかわからない。
怪訝そうな顔をする花澄に、雪也は続ける。
「あの後、君がいた部屋に行ってみたんだけど、その時もう君はいなくて」
「……」
「テーブルに君が持ってきたクッキーが置いてあったから、チャレンジしてみたんだ。……そしたら、食べることができた」
雪也の言葉に、花澄は驚いて目を見開いた。
雪也は歩みを緩め、頭一つ高い位置から花澄を見下ろす。