恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



<side.環>



部屋の隅に置いた時計がカチカチと規則正しい音を立てている。

環は離れの自室の窓から屋敷の方をじっと見つめていた。

いつのまにか月は雲に隠れ、重たい雨雲が夜空を覆っている。

鉛色の夜の帳の中、湿気を含んだ重たい空気が部屋に満ちる。

――――まだ、二人が帰ってくる気配はない。

環は机の上に置いてあった携帯を手に取り、開いた。


『今日は雪くんとご飯を食べて帰るから、夕飯は結構です』


母の律子と自分宛てに届いた、花澄からのメール。

夕方から、もう何度見たかわからない。

環は目を伏せ、ぱたんと携帯を閉じた。


ふと、机の上を見ると……。

今朝郵送で届いたストラップが置いてある。

……花澄が2年前から熱愛しているキャラクターのストラップ。

これのどこが可愛いのか、環には正直わからない。

けれど、それ以上にもっと分からないのは……。


「……」



< 93 / 476 >

この作品をシェア

pagetop