恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
<side.環>
部屋の隅に置いた時計がカチカチと規則正しい音を立てている。
環は離れの自室の窓から屋敷の方をじっと見つめていた。
いつのまにか月は雲に隠れ、重たい雨雲が夜空を覆っている。
鉛色の夜の帳の中、湿気を含んだ重たい空気が部屋に満ちる。
――――まだ、二人が帰ってくる気配はない。
環は机の上に置いてあった携帯を手に取り、開いた。
『今日は雪くんとご飯を食べて帰るから、夕飯は結構です』
母の律子と自分宛てに届いた、花澄からのメール。
夕方から、もう何度見たかわからない。
環は目を伏せ、ぱたんと携帯を閉じた。
ふと、机の上を見ると……。
今朝郵送で届いたストラップが置いてある。
……花澄が2年前から熱愛しているキャラクターのストラップ。
これのどこが可愛いのか、環には正直わからない。
けれど、それ以上にもっと分からないのは……。
「……」