恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



窓の向こうで屋敷の玄関に明りがつく。

どうやら帰ってきたらしい。

環は夜闇の中、ぼんやりと浮かぶ屋敷の玄関をじっと見つめた。

夕飯は済ませてきただろうし、風呂の支度も終わっているので特に屋敷に行く用事はない。


けれど……。


環はストラップをしばし見つめた後、そっと手に取った。

シャツの上から上着を羽織り、屋敷へと続く渡り廊下を歩いていく。

渡り廊下は雑木林を抜け、キッチンの裏口へと続いている。

環はそっと裏口の扉を開け、中に入った。

キッチンを通り抜け、食堂に入る。

……と。

リビングに明りがついていることに気付き、環は息を飲んだ。

見ると。

リビングのソファーで花澄と雪也が何やら話しているのが見える。

何を話しているのかはわからないが、たまに楽しそうな笑い声が上がる。


……そして。


二人の手にあるモノを見、環は目を見開いた。


「……っ!!?」


環が手にしているものと全く同じストラップが、二人の手にある。

……花澄が欲しがっていたストラップ。

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