恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
二人はお互いの手にあるストラップを見せ合い、楽しげに談笑している。
「…………」
環はとっさに目をそらした。
――――胸に突き上がる、鋭い痛み。
環は無言でくるりと踵を返した。
ふと、窓の外を見ると……
夜闇の中、庭の木々が霧雨に煙っている。
どうやら雨が降り出したらしい。
……胸に、黒いものが広がっていく。
何度消そうとしても消えない、黒い感情。
どうにもならないと、わかっている。
立場の違い。身分の違い。
叶うはずのない想い。
未来はないと、わかっていても――――
この痛みに慣れることは、永遠に……ない。
環は唇を噛みしめ、静かに渡り廊下の方へと戻って行った……。