恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「……友人、ですか。それは、女性の方ですか?」

「ええ、そうですけど……」

「失礼しました。てっきり男性の方かと思いまして」


暁生はにこやかに言うが、その眼鏡の奥の瞳は笑っていない。

……何かを見透かそうとするかのような、鋭い瞳。

花澄は思わず息を飲んだ。

暁生は花澄をじっと見つめたまま、その形の良い唇を開く。


「ひょっとして、あなたが同窓会に行くのは、どなたかに会うためですか?」

「……え?」

「たとえば、……初恋の人、とか?」


暁生の言葉に、花澄は眉根を寄せた。

花澄にとって初恋の人は、昔、婚約者だった月杜雪也だ。

しかし今はもう、彼とは連絡すら取っていない。

7年前、花澄は環と付き合ったことで、婚約者だった雪也を裏切る形となってしまった。

だから少なくとも、花澄の方から連絡を取ることはできない。

そして雪也からもこの7年、何の連絡もなかったことを考えると、彼も東洋合繊の後継者として華やかな道を歩いているのだろう。

御曹司の彼と今の自分とでは、まるで釣り合いが取れない。



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