恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
無言の花澄の目の前で、暁生の目がみるみるうちに険悪になっていく。
────昏く鋭い、その瞳。
あのクリスマスの夜に見た、破滅を予感させるような、あの瞳……。
花澄ははっと我に返り、慌てて言った。
「いえっ、特に誰に会うと言うわけでは……」
「……にしては今、考え込んでましたね? ひょっとして、あなたの初恋の人は同級生なのですか?」
「……っ!」
暁生の言葉に、花澄は目を見開いた。
……なぜ暁生は、ここまで鋭いのだろう。
花澄はどこか諦めにも似た気持ちで暁生を見た。
雪也に直接接点がない暁生であれば、話してもいいかもしれない。
花澄はグラスの水を一口飲み、ひとつ息をついた。
「実は、私の初恋の人は同級生なのですが、ここ7年、会っていないのです」
「……会って、いない?」
「ええ。7年前、私は彼と婚約していたのですが、婚約は破棄されて……。それから彼には、一度も会っていないのです」