恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
4.心を損なうもの
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時計は、深夜2時を回っている。
夜闇の中、シェードの灯りがぼんやりと壁を照らしている。
────東京湾に面した、高層マンションの一室。
窓の外には、煌びやかな都内の夜景が広がっている。
「……暁生。またあの子と会ってきたの?」
耳に響く、鈴を転がすような声。
その声だけで、声の主が類まれな美貌の持ち主であることがわかる。
酒で朦朧とする意識の中……。
しばしの静寂の後、再び声が響く。
「あんたの寝酒は昔から度を超えてたけど、日本に来てから一段とひどくなったわね?」
「……春燕、か?」
「大学の頃は、それでも吐いたりしてたからまだ可愛げがあったけど。今は吐くどころか、ザルよね。酒は鍛えられるっていうけど、本当ね……」