恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
ころころと転がる、鈴のような声。
脳に溶け込んでいく、その声……。
女はしばし押し黙った後、再び口を開いた。
「ね、暁生。……あの子に、まだ言わないの? いつまで隠し続けるつもりなの?」
女の言葉が鈴の音のように心を揺らす。
胸の奥の古傷が、痛みと共に開いていく。
いつもは理性の奥に隠れている想いが、胸の中でゆらゆらと灯火のように揺れる。
「言えるはずが、……ない。花澄は逃げた、しかも、二度も……」
自らの呻くような声が、酒で朦朧とした頭に響く。
脳裏に、ぼんやりと彼女の面影が浮かぶ。
あの店で自分の顔を見た瞬間、蒼白になり、踵を返した彼女。
あのホテルの部屋から、いつのまにか消えていた彼女。
そう、彼女はいつもするりと逃げてしまう。
……傍に居て欲しいと、どんなに望んでも……。