恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
<side.春燕>
漆のように艶やかな黒い髪が、白い枕カバーに無造作に広がっている。
酒気を帯びたその唇は紅梅のように紅い。
白皙の頬は7年前に比べたら少し男っぽくなったが、全体の印象は変わらない。
静かな寝息を立て始めた男の髪を、春燕はさらっと撫でた。
「仕事に一生を漬けるか、酒に一生を漬けるか……。心が死んだ人間の末路は哀れなものよ? ……ね、暁生?」
春燕は先ほどまで男が手にしていたグラスをじっと見つめた。
────グラスに残る、琥珀色の液体。
彼女が気に入ったというだけで、男がダース単位で揃えた酒……。
復讐とは真逆のことをしていることに、自身は気付いているのだろうか?
春燕は壁際に並ぶワインを見、くすりと笑った。
「あんたがこんな風に酒を買うなんてね。どんな形であれ、物欲が出てきただけでも、まだマシってとこかしら……」