恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
島本は花澄が差し出した五千円札を『会費』と書かれた封筒にしまい、手元のリストにチェックをつけた。
そのリストを何の気なしに眺めていた花澄だったが、自分の名前の少し上に記載された名前を見、思わず息を飲んだ。
『月杜雪也』
島本は花澄の視線の先にある名前に気が付いたのか、うーんと腕を組んで言う。
「雪也、昨日連絡したら来るって言ってたんだけどな。仕事忙しいのかなー……」
「……」
「あいつ、大学はずっと京都にいたし、院まで行ってたからこっちに戻ってきたの去年なんだよね」
「……そ、そうなんだ……」
「あれ? 藤堂さん、知らないの? あんなに仲良かったのに?」
島本の言葉に、花澄は慌てて首を振った。
……まさか、雪也が院にまで行っていたとは知らなかった。
驚く花澄に島本は続けて言う。
「あいつ今、東洋合繊の専務か何かやってるんじゃなかったかな。詳しくは聞いてないけど……」
「……せ、専務?」
「あいつ世渡り上手そうだしな。そもそも会長の孫だし。……あー、万年ヒラのオレからしたら羨ましい限りだぜ、まったく」